記野式:サクッと!ゲーム業界講座 4月前半号 * 本マガジンの転載、転送、コピーはご遠慮いただきますようお願い申し上げます *

■目次
記野式まえがき:E3 2022がオールキャンセル

イギリスソフトランキングTop10(2022年第13週:3月27日~4月2日)
  おまけ:イギリスで過去に売れたゲームブランド!

2022年第1四半期 世界のアプリマーケット
  1.アプリ市場はポストコロナの様相
  2.モバイルアプリの売上とダウンロード数
  3.モバイルゲームの売上およびダウンロード数

サブスクについて
  1.サブスクの未来
  2.PS Plus 2.0
  3.アメリカのゲームユーザーはXbox Game Passを選ぶ?
  4.AppleのiPhoneハードウェアサブスク?

NFTの話をする!その2:NFTの課題
  1.NFTの難解さ
  2.NFTの怪しさ
  3.複雑な取引と高い手数料
  4.まとめ

その他のニュース
  1.Epicのウクライナ寄付金
  2.ユーザーにとってはソニーのBungie買収のほうが興味深かった?
  3.Xbox Game Passはインディーズに門戸を開いている!

記野式:あとがき

こんにちは。東京の桜はもうほとんど散ってしまいましたが、皆様ご覧になったでしょうか?美しく咲き誇るソメイヨシノには毎年心を奪われます。今年は桜と共に北上を企てている私です。

隅田川の土手で撮りました!

この原稿を書いている4月10日は朝から気温が上がって26度まで達しました。この気温の乱高下にはまいりました…体調管理には気をつけたいところです。為替の行き過ぎにも困っているところですが…(汗)。

さて、今回のまえがきはE3 2022がすべてキャンセルになってしまった話から。そして、イギリスソフトランキング!お約束のNFT(その2)も読んでくださいね。

本記事での為替レートは1ドル=124円、1ポンド=162円で計算しています。先月の米ドルレートが116円ですから1か月で8円も円安になってしまいました…。

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先月前半号でドイツのGamesCom も東京ゲームショウ(TGS)も復活!というニュースをお伝えしましたが、アメリカでは世界最大のゲーム産業の展示会といわれた Electronic Entertainment Expo(E3)がデジタルも含めてキャンセルされました。

海外サイトでは「E3は死んでしまった」などと衝撃的なタイトルでの記事が出ていますが、実は運営側のESA(Entertainment Software Association:日本のCESAに該当)は練り直して来年再度トライする旨のコメントを発表しています。

古い業界人にとってはノスタルジーを感じるE3ですけど、ユーザーにとってはどうてもいい話だよね、と海外メディアは伝えます。そう、E3はもともと業界関係者だけが出入りできた展示会で、新しい情報はニュースサイトでしか得ることができなかったのですから、なくなったとしても一般ユーザーにとっては「へぇ、そうなんだ」って感じですよね。

今年はE3が行われていた時期(6月)に「Geoff Keighley’s Summer Game Fest」が行われる予定ですので、これを代替イベントと捉えていいと思います。ユーザーも参加できますしオンラインでも並行で視聴可能なものです。

ちなみにGeoff Keighley氏は、2014年に始まった「The Game Awards」(毎年12月に行われる世界のゲーム賞発表会)のエグゼクティブ・プロデューサー兼MCを務めています。

「Geoff Keighley’s Summer Game Fest 2022」にはすでに多くのパブリッシャーがパートナーとして名乗りをあげていて今年の夏の話題になることは間違いないでしょうね。

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さて、今月もイギリスのソフトウェアランキングから見ていきましょう。毎回お知らせしますがこちらのランキングはパッケージ版のみの集計になります。いつもはTop 40データが入手できるのですが、今週はなぜかTop10しかデータがゲットできませんでした。すみません。

しかしながら世界最速の売上データですのでTop 10だけでもご覧ください!

Ukie Games Charts/GfK データより

第1位はNintendo Switch向けタイトル『Kirby And The Forgotten Land(星のカービィ ディスカバリー)』でした。発売日3月25日にあたる前週からのキープでしたが、2018年3月に発売された「Kirby」シリーズ最高売上を誇る『Kirby Star Allies(星のカービィ スターアライズ)』の初動の2.5倍を売り上げるなど、過去最高ペースで売上を伸ばしています。

しかし…発売週の前週と比べて43%ダウンの売上高。それでも1位を譲っていないとところがすごいですね。ただ、実はこの勢いも昨年の『Metroid Dread(メトロイド ドレッド)』の初動は下回っており、大局的には大きなインパクトを出せてはいません。

ま、逆に言えば、任天堂の他のIPに比べてプレゼンスが高くない「Kirby (星のカービィ)」がココまで頑張っている!と褒めるべきでしょう。

また、アメリカの話ですが、「Kirby (星のカービィ)」のゲーム音楽をジャズオーケストラアレンジした作品がグラミー賞を獲得しましたね!こういう追い風が「Kirby (星のカービィ)」シリーズをさらに高みに持っていくかもしれませんね。

さて、ランキング2位の『Elden Ring(エルデンリング)』はランキングこそ前週から1つ上げているのですが、売上高としては前週比22%ダウン。まぁ発売直後にロケットスタートだったので納得ですがね。

3位は『The Pokemon Legends: Arceus(ポケモンレジェンズ アルセウス)』。前週比としては売上高9%ダウンですが、前週5位から浮上しました。

前週発売され、2位にランクインしていた『Tiny Tina’s Wonderlands(ワンダーランズ ~タイニー・ティナと魔法の世界)』は4位にダウンしていますが…このタイトルを知ってますか?

人気タイトル『Borderlands(ボーダーランズ)』シリーズの開発会社Gearbox Softwareが世に放った本作は、「Borderlands(ボーダーランズ)」シリーズのスピンオフであり、Borderlands 2のDLC(単体リリースもされました)の『Borderlands 2: Tiny Tina’s Assault on Dragon Keep(タイニー・ティナとドラゴンの城塞)』の続編です。「Borderlands(ボーダーランズ)」のファンにとってはそりゃー「待ってました!」ってタイトルなんですよ。

え、じゃあランキングがもっと上でもいいのでは?と思ったら、同作はデジタルでも販売されていて売上の大半がデジタル版だった、という情報からもこのパッケージだけのランキングでは計り知れないってことですね。

『Tiny Tina’s Wonderlands(ワンダーランズ ~タイニー・ティナと魔法の世界)』の売上の52%はPlayStation 5版、25%がXbox Series X/S版、15%がPlayStation 4版、8%がXbox One版だったとのこと。売上の77%が新ハード版から成り立ってるってことは…新しいハードをすでに持っているユーザーたちには響いてるってこと、もっと言うとハードのみならず新ハード向けのソフトも足りないってことです。

ハードが出回ってないからそのハード向けのソフトがなかなか発売できない…ソフトが発売されないからユーザーは待ちぼうけ…とあまり良いスパイラルではないですよね…ソフトがんばれーですが、まずはハードの供給をよろしくお願いします(最近コレばっかりだな)。

7位は前月上旬にトップだった『Gran Turismo 7(グランツーリスモ7)』。さすがクルマ好きのイギリスマーケット!まだトップ10内で健闘しています。

サーバダウンや追加の課金システムがあまりに金の亡者のようにギラついている(笑)とユーザーの評価は芳しくないようですが、その声を聴いてソニー(ポリフォニー)は発売後も改変を続けています。売上は引き続き上々です。

8位はTake 2の『WWE 2K22』。「WWE」のスター選手新旧総勢160名以上を操作できる格闘ゲームシリーズの最新作です。3月11日の発売で初週2位→3位→8位と推移し未だトップ10内に留まっています。

前作『WWE 2K20』の絶不評を踏まえ、制作を通常より一年遅らせての発売となりましたが、名レスラー、Rey Mysterio(レイ・ミステリオ)のキャリアを追体験できるショーケースモードなどもファンのノスタルジーに訴えて好評を博しており、カムバックタイトルと言える結果をおさめています。

WWEがTake 2からElectronic Arts(EA)に版権を移動するのでは?とのうわさもあり、もしかしたらTake 2製の最後のWWEかもしれません。

前週3月25日に発売された『Ghostwire Tokyo(ゴーストワイヤー トウキョウ)』は初週11位にランキングされたものの売上を70%落として23位までランクを落としてしまいました。

Bethesda Gamesから発売されていますが正真正銘日本発のゲームですから頑張ってほしいところですね。

ちなみに今週のチャート唯一の新作は40位の『Crusader Kings III(クルセイダーキングスIII)』のみでした。スウェーデンのゲームパブリッシャーParadox Interactiveの作品です。

本作はPC版で人気を博した戦略ゲームなのですが、コンソール版での操作感がとても良いと評判です。

今週は競合が少ないこともあり、『Kirby And The Forgotten Land(星のカービィ ディスカバリー)』が前週に続いてトップの座をキープできましたが、翌週は 『Lego Star Wars: The Skywalker Saga(レゴ?スター・ウォーズ/スカイウォーカー・サーガ)』に1位の座を奪われるのでは?という推測が専らです。見守っていきましょう。

おまけ:イギリスで過去に売れたゲームブランド!

イギリスランキングついでに、欧州の調査会社Gfkが、1995年からの27年間でイギリス市場で最も売れたビデオゲームシリーズTop30を発表しました。

このランキングは、大手小売店のPOSデータ(コンソール/PC)を集計しておりこのTop30のブランドだけのイギリスにおける総売上額は約130億ポンド(約2.1兆円)に上るとのことです。

まずはTop10から。

タイトル数はSKUですのん

1位は『FIFA』。さすがサッカー好きの国民性が出ていますね。2位は『Call of Duty』シリーズ。これらは毎年リリースを欠かさない戦略を取っていてファンの心を離さないのでしょうね。

『次回作『FIFA 23』の後は開発、販売元のElectronic Arts(EA)がFIFAの冠を外して開発を継続する可能性が報じられていましたね。ブランド名変わっちゃうじゃん!ちなみに『EA Sports FC』というブランドになりそうですよ。

3位は日本のIP、任天堂のMarioシリーズが登場です。特に『Mario Kart Wii(マリオカートWii)』、『Mario Kart 8(マリオカート8)』、 『New Super Mario Bros.(New スーパーマリオブラザーズ)』が引っ張ったようです。

11位以降も見てみましょう。

多くは語りませんがノスタルジー満載です。笑。約30年間の月日を経て、かつてはニッチ産業であったイギリスのゲーム市場規模は大きく成長しました。それに応じてタイトルも多様性を増したことが伺えますね。

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<2022年第1四半期 世界のアプリマーケット>

SensorTowerによると、2022年第1四半期(Q1:1月~3月)のApp StoreおよびGoogle Playにおける世界のアプリ普及率およびアプリ内課金、プレミアムアプリ、サブスクに関する売上規模は、いずれも前年同期比で横ばいだったことが明らかになりました。

1.アプリ市場はポストコロナの様相

一方、トップアプリの月間アクティブユーザー数(MAU)は前年同期比4.8%アップしており、メディカル関連アプリなど一部のカテゴリは2021年Q1と比較して2倍以上に増加しています。

世界で最も利用されているモバイルアプリのトップ100をカテゴリ別に分析したところ、「メディカル」関連が前年同期比で最も利用者が増加しており、上位アプリの平均MAUは2倍以上に。2位は「ナビゲーション」関連で前年比23.5%アップ、3位は「トラベル」関連で約19%アップとなりました。これは、「ビジネス」が最も高い伸びを示していた過去2年のQ1とは異なる結果です。

2022年Q1に「ナビゲーション」と「トラベル」関連アプリの利用が増加したのは、新型コロナウイルス感染に関する規制がある程度緩和され、より多くのユーザーが旅行をするようになったことによるものと考えられます。

また、上位のメディカル関連アプリにおけるMAUの増加は、主にインドネシアの「PeduliLindungi」、韓国のワクチンパスポートアプリ「COOV」、ブラジルの「Conecte SUS」などの新型コロナウイルス感染関連アプリの利用が急増したことによるものです。リモート診療などをはじめとしたモバイル端末を活用した医療関連サービスの利用にユーザーが慣れてきたことも影響していると思われます。

「天気」「ライフスタイル」「ニュース」「ゲーム」を除く、調査対象となったほぼすべてのカテゴリで利用が増加という結果になりました。「ゲーム」関連アプリは2022年Q1と比較して利用が最も減少しており、前年比3.8%ダウンとなりました。

2.モバイルアプリの売上とダウンロード数

2022年Q1のアプリ(ゲーム含)のアプリ内課金、プレミアムアプリ、サブスクの全世界の売上規模は、2022年Q1では325億ドル(約4.03兆円)で、2021年Q1の323億ドル(約4.0兆億円)からわずか0.6%アップで前年同期比ほぼ横ばい。

App Storeの売上はGoogle Playの2倍以上で、前年同期の206億ドル(約2.5兆 億円)から5.8%アップの218億ドル(約2.7兆円)になりました。Google Playの売上は約107億ドル(約1.3兆円)で、2021年Q1の117億ドル(約1.4兆円)から8.5%ダウンとなりました。

TikTokは、中国のiOS向け「Douyin(抖音/ドウイン)」を含めApp Storeのノンゲームアプリ全体の売上高でトップの座を維持しました。両ストアを通じ、TikTokの今期売上は8億2,100万ドル(約1,018億円)でした。Google Playでは約2億5,000万ドル(約310億円)で首位のGoogle Oneに次いで2位となりました。

App StoreとGoogle Playの2022年Q1の初回ダウンロード数は、前年比1.1%アップの368億ダウンロードに達しました。両プラットフォームともほぼ同じ伸びを示し、App Storeは前年同期比1.2%アップの85億ダウンロード、Google Playは前年同期比1.1%アップの283億ダウンロードとなりました。

TikTokはAppleのプラットフォームのみならず全体のダウンロード数が最も多く、世界で1億8,600万回以上インストールされました。Google PlayではMetaがInstagram、FacebookでGoogle Playのチャート上位を独占しています。

2021年には、Google Playで最もダウンロードされたアプリはFacebookでしたが今期は1位の座をInstagramに譲りました。Instagramは全世界で1億2,580万の初回インストールを記録しています。

3.モバイルゲームの売上およびダウンロード数

では、モバイルゲームアプリはどうだったんでしょうか?

モバイルゲームの売上は前年同期比7.1%ダウンの210億ドル(約2.6兆円)で、App StoreとGoogle Playのともに売上が減少しています。App Storeにおけるモバイルゲームの売上は、前年比2.3%ダウンの約129億ドル(約2.6兆円)、Google Playは前年比13.8%ダウンの81億ドル(約1兆円)でした。

2022年Q1のモバイルゲーム全体の売上トップ3は、すべて中国のパブリッシャーによるものでした。

Tencentの『Honor of Kings(王者栄耀)』は、両ストアで7億3,540万ドル(約911.8億円)、『PUBG Mobile(中国語版『Game for Peace』を含む)』は6億4,300万ドル(約797.3億円)を売り上げ、2トップとなっています。3位はMiHoYoの『Genshin Impact(原神)』で、5億5,100万ドル(約683.2億円)でした。

Google Playでは、NCSoftの『Lineage W(リネージュ W)』がトップで、Moonactiveの『Coin Master』、Kingの『Candy Crush Saga』が続きました。

ではダウンロード数はどうだったのでしょうか?2022年Q1の全世界のモバイルゲームのダウンロード数は、前年比2.1%アップの144億ダウンロードになりました。これは主にGoogle Playが牽引したもので、前年同期比2.5%アップの121億ダウンロード。App Storeのゲームダウンロード数は前年同期比横ばいの23億ダウンロードにとどまりました。

ではダウンロードのランキングを見ていきましょう。

首位のGarenaの大人気バトルロワイアルタイトル『Garena Free Fire』は両プラットフォームで7,120万ダウンロードを達成しました。続いて、Sybo Gamesの『Subway Surfers』が全体で6,640万ダウンロードを記録し、App Storeのチャートでは首位にランクインしています。全体の3番目にダウンロードされたタイトルは、Homa Gamesの『Merge Master – Dinosaur Fusion』で、4,940万インストールを達成しました。

『Merge Master – Dinosaur Fusion』恐竜をみつけて
掛け合わせて新しい恐竜を作り出すゲーム

2021年にApp Store、Google Playが経験した2桁の伸び率に比べると2022年Q1は売上規模の成長度が鈍化しています。特にモバイルゲームについては減少を記録しました。これは市場が飽和したということではなく新型コロナウイルス感染拡大が始まった異常な高成長からやっと市場が正常化したと捉えるべきでしょう。

ただ、サプライチェーンの破綻やウクライナ問題などに起因するインフレでユーザーの財布のひもが固くなったことも原因と考えられます。これはモバイルゲームに限ったことではありませんが、忌々しき問題ではありますね。

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Xbox Game Passの好調が火をつけたゲーム業界におけるサブスクリプション(定額制:以下サブスク)サービス。これについて少し語ります。もちろん先日発表されたソニーのPlayStation のサブスク変更についても!

1.サブスクの未来

Ampere Analysisによると、ゲーム業界におけるXbox Game Pass、PlayStation Plus、Nintendo Switch Onlineなどのサブスクサービスは、年間で37億ドル(約4,588億円)を生み出しています。これは欧州とアメリカのゲーム市場規模全体の4%を占めています。

その稼ぎ頭はMicrosoftのXbox Game Passで月額最大15ドル/11ポンドの定額制。2017年6月のサービス開始以来現在では2,500万人を超える加入者がおり、サブスク市場の約60%のシェアを占めているのです。

そんな中、3月末にソニーがようやく Microsoft の Xbox Game Pass に対抗するサブスクサービスを発表しました。

2.PS Plus 2.0

PlayStationのオンラインサービス PlayStation Plus(以下PS Plus)はオンラインでゲームをするにはユーザーにとって不可欠なもので、現在5,000万人を超える加入者がいます。その PS Plus に同社のクラウドゲームサービス PS Now(2021年5月末現在320万人加入) を追加したものを提供するということみたいですね。

しかしながら、Xbox Game Passとまったく同じわけではないので、海外サイトKotakuは「Microsoft はゲーム版 Netflixを、 ソニーはゲーム版 Hulu を提供すると思ってください」というおもしろい見解を示しています。

PS PlusはEssential(エッセンシャル)、Extra(エクストラ)、Premium(プレミアム)の3つのコースがあります。

① PlayStation Plus Essential(エッセンシャル)

  現行のPS Plusと同様のサービス内容。価格も現行同様。

② PlayStation Plus Extra(エクストラ)

  上記①エッセンシャルに加え、数百本のPlayStation 4およびPlayStation 5の人気タイトルのダウンロードが含まれる。価格は下記の通り。

③ PlayStation Plus Premium(プレミアム)

  上記②エクストラに加え、下記の最大240本のタイトルも遊べる。価格は下記の表をご覧ください。

- PlayStation 3タイトル(クラウド)
- 初代PlayStation、PlayStation 2およびPSPのクラシックタイトル
  (クラウドおよびダウンロード)
- PS Nowタイトル
- 購入前のゲームタイトルトライアル

<PlayStation Plus 価格表>

ではXbox Game Pass と比べてみましょう。

<Xbox Game Pass 価格表>

Xbox Game Pass にはオンラインサブスク(Live Gold)と100タイトル以上のフリープレイが含まれていますから、ソニーのPS Plusでいうとエクストラ、プレミアムと同等のサービスになります。

1か月単位で見ると間違いなくXbox Game Passがお得なんですが、12ヶ月で見るとソニーのほうがお得かもしれません。Xbox Game Pass は初月1ドル(日本は100円)などのキャンペーンをするのでこちらも一概には言えませんが…。

タイトル数はPS Plusのほうが圧倒的に多く、旧世代機向けのタイトルラインナップを多数揃えています。逆にXbox は発売と同時のタイトル(Day 1 タイトル)をこの中に含んでいますから、発売日にタイトルを買わなくてもXbox Game Passに加入していればタダで遊べるという利点があります。ちなみにソニーは今のところ「Day 1タイトルはPS Plusに入れない」と断言しています。

どちらかを選ぶのであれば、ソニー/PlayStation信者(笑)はPS Plusを、新しいゲームが遊びたい!のであればXbox Game Pass をお勧めします。ってことで対抗ではありますがPS PlusとXbox Game Pass には違いがありますのでご注意を。

3.アメリカのゲームユーザーはXbox Game Passを選ぶ?

オンラインコミュニティのYouGovが、1月にアメリカの成人1,200人とイギリスの成人1,200人を対象にオンラインで調査した結果によると、アメリカのPlayStationと任天堂のプレイヤーの約半数にあたる46%が、Xbox Game PassにActivisionのタイトルが追加されれば「Xbox Game Passを検討する」と回答しました。

MicrosoftがActivision Blizzardを687億ドルで買収する予定と1月にお伝えしましたが、これはゲーム業界史上最大の買収額で、Xboxはこの買収により『Call of Duty』『Warcraft』『Overwatch』『Crash Bandicoot』『Guitar Hero』などの超有名フランチャイズをゲットすることになります。

この中でもやはり『Call of Duty』の人気が高く、アメリカのゲーマーの19%、イギリスのゲーマーの11%が、Xbox Game Pass 加入の一番の決め手になり得るActivision Blizzardタイトルは『Call of Duty(コールオブデューティー)』シリーズ!と回答しています。

Microsoftは、各国の規制当局の審査完了を待って2023年前半に買収を完了したいとしています。これが実現すればXbox Game Passはさらに加入者数を伸ばすのでしょうかね。

ちなみに買収される側のActivisionは、セクハラ訴訟で1,800万ドル(約22.3億円)を和解金として支払うことを発表しています。

ココでも何度かレポートしていますが、Activisionは従業員からのセクシャルハラスメントの苦情について是正・予防措置を取らなかったこと、給与や昇進において女性を差別したこと、また妊娠中の従業員を差別したことなど企業として大きなセクハラ問題を抱えていました。

4.AppleのiPhoneハードウェアサブスク?

同じサブスクでもこちらはハードのお話。Bloomberg によるとApple が iPhone、iPad、Macなどのハードウェア をサブスクで展開するビジネスを検討中とのことです。

確かにiPhone、iPad、Macのような高額なデバイスを一括で買えなくても月々のサブスクで支払うことにより手に入れられるならユーザーにとっては嬉しいことですし、Appleにとってもチャリンチャリンと毎月お金が入ってくるのは悪いことではありません。

現在キャリア(日本でいうドコモ、KDDI、ソフトバンクなど)がユーザーに月賦支払を提示している形をApple自らがやろうとしているということですね。しかも、Appleの場合は新機種が発表されれば新しいものに乗り換えられるという利点もあります。

Appleは2022年末のサービス開始を目指しているようですが…これが噂で終わってしまうのか?Apple側は取材を拒否しているようですよ。

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3月前半号でNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)ってなぁに?とNFTを取り巻く用語の解説をしましたが、もう少し細かいことやNFTの課題についてその2で書くよーってお約束したのでもうひとつ掘り下げますね。

その前に。NFTに関連して少し嫌なニュースが入ってきて私もコレを書くモチベーションが一瞬(笑)下がりました。

ベトナムのSkyMavis社が配信するNFT技術を活用したオンラインゲーム『Axie Infinity(アクシー・インフィニティー)』が3月23日にハッキングの被害に逢い、17万3,600イーサリアム、USDコインで2,550万USDCを不正に引き出され、3月30日現在のレートで被害総額は6.15億ドル(約762.6億円)に上ったとのこと。

暗号通貨におけるハッキングで史上最悪の被害総額だそうで、Sky Mavis社は、4月6日にはユーザーへの損害補填のために1億5,000万ドル(約186億円)の資金調達をしたと発表しています。

コレに関しては5月前半号の「NFTの話をする!その3」にまとめたいと考えています。そのころにはいろいろと結果も出ているでしょうし、こちらもご期待ください。

さて、今回のその2はNFTがメジャーになるための難しさ、課題、キャズム(深い溝)について語ります。

1.NFTの難解さ

前回もお話ししましたが、その技術のみならず用語の難しさが一般ピープルが「わからない」元凶です。実際のサービス名(トレードマーク)がそのサービスを指すという時代になれば、用語や技術なんて気にならず「使う」だけになるのですが、まだまだそこまでは言っていません。

一般的なユーザーはPayPayの技術的なバックグランドとかiModeが使う帯域なんて知らずに使うじゃないですか。サービスとして簡単で使いやすくなる!フェーズにならないと使われません。

逆に言えば、使いやすいサービスに落としてくれれば出回るのですよ。

2.NFTの怪しさ

暗号資産、ブロックチェーンと聞くとドン引きする人々はいます。なぜなら「怪しい」って思ってるから。笑。怪しい理由は「わからないから」がメインですが、それに加えてビットコインなどの暗号資産が投機性があるからでしょう。つまり暗号資産と通貨は固定レートではなく変動レートだからです。

それにイーサリアムだけ取っても高額。コレを書いている時点で調べたら1リーサリアムは40万円強、1ビットコインは530万円強。これじゃ一般ピープルには手が届きません…。そして、このレートは秒ごとに変動します。投機的ですよね。

もっと手に入れやすい単位(100円くらいから)にならないと出回るのは難しいですね。これはこの後の手数料の話にもつながります。

ちなみに暗号資産でUSDC(USD Coin)というものがあるのですが、これは最初に書いたハッキング事件に逢った『Axie Infinity(アクシー・インフィニティー)』でも利用されていて1USDCが124円くらいです。これくらいのレートで買える暗号資産が出回ると手が出しやすいですよね。

で、この「怪しさ」ですが、これはあくまでも「未知のもの」への恐怖かと。昭和のおじさんたちが「クレジットカードは危険!」と言っていたことを考えるとそういうことかと。出回って安全性が担保されれば理解する、しないに関わらず「使う」んです。

ドルと円だって変動しているんですから取引レートが変動するのも「そういうもんだ」と思えば納得するんです。

3.複雑な取引と高い手数料

NFTには、出品するときに発生する販売手数料、NFTをウォレットへ移動するときに発生する出庫手数料、決済手数料など複数かつ高額が手数料が発生します。

つまり、NFTを売り買いするには、まず現金をイーサリアム等の暗号通貨に換えておき、実際の売り買いするときに手数料がかかり、暗号資産で支払いまたは受領する際に手数料がかかり、売り買いしたもの(NFT)を自分のウォレットに移動するのに手数料がかかる…って構造です。

また、ガス代といわれるイーサリアムを移動するたびにかかる手数料もあり、各々金額の数%~10%かかるわけですから…高額取引をしないとうま味がないわけです。これが現在のNFTの高額取引の裏側なのです。

この手数料の煩雑さと高額化を見るにあたり、NFTを売買するには取引が複雑で難しいこともわかります。数をこなしていないため処理能力も高くありません。

これらをパッケージ化して一般ピープルが使えるレベルの簡素なサービス商品として提供されること、全体の手数料が下がること、迅速にサービスが行われることが前提で広まりは期待できます。

たくさん使われればこのような簡素化/手数料低額化の流れになるんでしょうけど、そうならないとたくさん使われないという「にわとりと卵」の関係になっているのが現状です。

4.まとめ

普及しなければNFTがマニア向けで終了してしまいます。5月前半号にて<NFTの話をする!その3>で具体的にNFTがどのような分野でどう有効なのかについて語りますが、NFTが普及することによって新しい市場が生まれ、新しい雇用が生まれるのです。

ちょっと難しい話をすると、NFTは現在サービス普及のステージでいうと「アーリーアダプター(新しいサービスを早い段階で取り入れる人たち)」を経て、「マジョリティ」に至るための「深い溝」に陥っています(この深い溝を「キャズム」と呼びます)。

BtoBマーケティングラボ 資料より

NFTを進めるには、ココで書いた課題、つまりキャズムを埋めなければなりません。これにはもう少し時間がかかりますが、特にゲーム業界と親和性の高いNFTですからしっかり押さえておきたいところです。来月も連載を続けたいと思います。

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1.Epicのウクライナ寄付金

前号でもレポートしたEpic Gamesによる『Fortnite(フォートナイト)』の全売上のウクライナ救済への寄付ですが、3月20日~4月3日までの総額が発表されました。

なんと総額1億4,400万ドル(約178.5億円)以上が集まったとのこと。同社は、様々な人道支援団体に代わって資金を集めました。『Fortnite』に関わるサブスク、コスメティックパック、バトルパスなど、ゲーム内で購入されたすべてのリアルマネーにMicrosoftが同じ期間にMicrosoftストアで販売した『Fortnite』関連の売上も追加されています。

Epic Gamesはすでにロシア市場から撤退しており、さらに支援を続けることを発表しています。カッコいいっす!

2.ユーザーにとってはソニーのBungie買収のほうが興味深かった?

Twitter社のRishi Chadha 氏(@RdotChadha)が、ゲーム関連ツイートデータを発表しました。

まずは、2021年に最もツイートされたゲームは下記の通り。

日本はTwitter利用率が高いと言われていますが、それにしても日本で親しまれているタイトルが本当に多いですね!

さて、今年になってから…2022年第1四半期(Q1:1月~3月)のツイート数について気になる情報が!

特にツイート数が伸びているタイミングが、2022年Q1で4回あったことが分かります。左から「MicrosoftによるActivision Blizzard買収の発表」、「ソニーによるBungie買収の発表」、「『ELDEN RING』発売」、「『Fortnite』新シーズン開始」です。

『ELDEN RING』発売時のツイート数は、なんと画像の最上部まで到達しています!笑。さすがの注目度ですね。プレイ開始してすぐTwitterで意見交換や攻略について語り合ったプレイヤーたちが多かったということでしょう。

また、『Fortnite』の新シーズン開始に際してのツイート数も伸びていることがよくわかります。”シーズン”という形でコンテンツに定期的な新たな風を吹き込むことでプレイヤーを掴んで離さない戦法は、最近の「記野式」でもたびたびお伝えしている通りです。

注目はMicrosoftによるActivision Blizzard買収、そしてソニーによるBungie買収のタイミングです。そして、ソニーのBungie買収がMicrosoftのActivision Blizzard買収よりも、少なくともTwitter上はでより多くの議論を巻き起こしたことが明らかになりました。

業界として、ビジネスとして、金額としてはMicrosoftのActivision Blizzard買収のほうが大きいニュースだと思ったんですが、ユーザーにとってはBungieをソニーが買収することの方が大きいニュースだったんですねー。笑。謎だ。

3.Xbox Game Passはインディーズに門戸を開いている!

Microsoftのインディーズ向けプログラムID@Xboxにおけるインディーズパブリッシャーへの支払いは25億ドル(約3,100億円)に達しているとの発表がありました。これはインディーズがXbox Game Passに提供した数百のタイトルに対する支払いも含むとのこと。

確かにMicrosoftはXbox当初からインディーズへの門戸を開いています。任天堂もeShopにおけるインディーズへの扉を大きく開けており「ゲームの多様化」が進んでいることは実感していました。

ID@Xboxには過去2年間で1,000以上のデベロッパーが登録しており、Microsoftはユーザーの多様性に合わせてインディーズのゲームがユーザーに見つけやすいように仕様を変化させていると言います。

現在では大企業となったゲームメーカーも最初は小さなインディーズだったはずです。これからのクリエイティビティを育てるためにもプラットフォーマーにはこういうサポートは積極的にしていただきたいなと思う今日この頃です。

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E3 2022がキャンセルされてノスタルジーに浸っていました。笑。でも、ユーザーにとってはそんなことどうでもいいんです。良質なゲームタイトルが生まれ、求めるユーザーのもとへ告知できるならE3じゃなくてもいいんですから。

昔、Webライターをやっていた時に、ゲームプラットフォームが進化して開発費が高騰化してくるとゲームタイトルが「ハリウッド化」しておもしろくなくなるって書いていたんですが、モバイルデバイスや最後の記事に書いたプラットフォーム側のインディーズサポートによって見事にこれらの予想を外してくれましたね。笑。

ハリウッド化している良質ゲームもありますが、ユーザーの多様化に応えているインディーズを含めたニッチゲームもあります。ダイバーシティとはそういうことなんでしょうね。個人の見解も様々違うし、個人の好みもそれぞれ違うのです。多種多様なユーザーの好みに合わせたゲームタイトルが並ぶこと、それもゲーム業界の使命なのかもしれませんし、それから新しいジャンルや遊び方が生まれるのかもしれません。

と、話は尽きませんが…また25日にお会いしましょう!

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